本屋さんで並んでいると、僕のすぐ前は高校生の女の子だった。彼女は、僕の方をチラチラ見ていたので何かな?と思ったのだが、すぐに気がついた。後ろに並ばれるのが嫌だったのだ。その理由はわからなかったが、僕はちょっと微笑んだ。
この微笑みは知らない人からみたら気持ち悪かったかもしれないが「待ってもいいよ」というサインだった。残念ながら彼女には通じなかった。なるべく僕のほうを見ないようにして、彼女は2度とこちらをみないまま順番が来た。
彼女が買ったのは1個だけだった。ここの本屋さんの片隅にある文房具売り場に、新しく入って修正テープを持っていたのだ。財布から時間をかけて小銭を取り出していた。最後は一円をカウンターに並べ始めた。
彼女は本当にギリギリのお金しか持っていなくて、その修正テープを買いに来たのだ。なんだか家族とのやりとりが透けて見えるような気がして。心が温かくなった。それほどお小遣いにゆとりはないのに、彼女はこの修正テープが欲しいのだ。
少なくなった小銭入れの中身を全部出して、貯金箱に残っている一円を全部数えて、消費税まで含めて「足りる!」と確信して、この本屋さんまでやってきたのだ。最新の修正テープを買いに、寒いのに自転車でやってきたのだ。
僕は本当に頭がさがる思いだった。
文房具の記事を書くために、文房具を買いあさって、使いまくっている。子供の頃に100円のお菓子を買うために小銭を数えていたことを、すっかりと忘れてしまって、そんなことをしている。いや、そんなことをしていたから今があるのかも。
今日、僕は見ず知らずの彼女にお礼を言いたいです。
忘れていた素敵な気持ちを思い出させてくれて、ありがとうございます。
僕の目標は「素敵な社会」を作ることでした。文房具を通じて、情報を発信して、素敵な文房具でどんどん進化していく人たちの手助けをすることが、僕の目標でした。ここを忘れないように、日々精進していきます。
そうそう、彼女が息を止めて買った文房具は、この修正テープ『モノエアー』でした!
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